近況報告 2023年12月31日(日)/ 2024年1月2日(火)追記
第一次石油危機から50年、つまりちょうど半世紀の2023年も終わります。
新型コロナ(COVID-19)パンデミックもクリミア戦争から尾を引くウクライナ戦争も、なかなか終わりが見えてきません。2023年は中東戦争まで加わりました。どうやら独裁者(ロシア、イスラエル、北朝鮮、中国)に振り回される波乱の世界が続きそうです。それに加えて来年は米国大統領選挙も控え、トランプの復権も噂されています。わが国は隣接する核保有国と領土問題を抱えるという極めて難しい位置にあり、頼みの綱の米国への追随外交で間に合わせの外交でしのいでいますが、モンロー主義的共和党とどう調整するかという難題を突き付けられそうです。
他方、国内政治に目を向けると、かつて「選挙に強い安倍晋三」「安倍一強」と呼ばれていましたが、一枚皮をはがせば、「宗教団体」(旧統一教会及び創価学会)の組織力・動員力と、派閥パーティー裏金による地方議員をも巻き込んだ「金」の力だったという「からくり」が露見されました。当初「新資本主義」という空虚なキャッチフレーズの岸田内閣も、まるで選挙対策なのか、「少子化対策」を御題目に「子育て世代」の優先政策ばかりです(先便昨年12月の『エンジェル係数倍増(選挙対策?)』から変化無し)。早い話、「少子化対策」と「大学無償化」(医学部も?)とどうつながるのか?何故若者を(徒弟制や専修学校進学を含む)多様な生き方ではなく、大学進学という一方向にだけ誘導するのか?今一つピンときません。政権は、「国民目線」どころか特定の層しか相手にしていないという嘆かわしい状態です。首相支持率低下なら、代わりの自民党総裁候補が浮上する筈が、それができないというのは、末期的現象です。
より深刻なのは、金融及び財政政策です。安倍内閣のもと黒田日銀総裁による異次元の金融緩和について、黒田氏は、退任後の日本経済新聞連載の「私の履歴書」で、総裁時代の自己の政策は正しかったと持説をかえない確信犯です。彼は2%のインフレ目標をはるかに超える昨今の物価高(前回2023年12月号参照)にかかわらず、賃金インフレは起っていないので、金融緩和は時期尚早と考えてきたようです。しかし実際はそんな仮説の答え合わせの話ではなく、ゼロないし1割程度という信じられないような少額の自己資金だけでの住宅ローン借入れ者、国債利払い額の上昇回避等の政治的配慮による「モラトリアム」だったとしか考えられません。後任の植田日銀総裁は、おそるおそる金融緩和の「出口」の入り口に立つようです。他国では、2024年はいずれも金融を緩和し始める段階なので、わが国の「逆走」ぶりが際立ちます。しかもわが国でも、2024年中に早晩、景気悪化、スタグフレーション対策として、金融緩和を行う必要がでてくるでしょう。日銀が切れるカードは、すでに黒田総裁時代に出し尽くしてしまっています。2024年の再緩和の時点で、日銀にどのような手が残されているのかは、はなはだ心もとないです。こうしたツケは次世代が払うことになりそうです。
次に財政面では、予算法律主義の下、国会が予算を統制するはずが、安倍内閣以降、新型コロナ対策等と称して多額の「予備費」が計上されて支出されてきました。2024年度の政府予算案段階でも、赤字国債頼みで「やっと1兆円に縮小」と報じられるほどに多額の金額が計上されています、「予備費」は、総額はともかく、その使途に関し、決算委員会を含めて国会はほぼ無力に近い状態で、これでは予算法律主義、国会(及び法律家?)による政府予算の統制は、全くもって形骸化されています。このツケも次世代が払うことになりそうです。
[Ⅰ]巣ごもり通信(続報)
「近況報告」の改訂をついつい先延ばし、今日に至りました。2020年1月から続いている生活必需の買い物と通院以外の「巣ごもり生活」のかたわら、機能性ヨーグルト(明治R1)、プロポリス等摂取のおかげなのか、新型コロナ(COVID-19)、インフルエンザ等の感染症とは目下のところ無縁状態です。
ただ2022年のコロナワクチン3回目接種以降、広義のワクチン「副反応」なのか、体調がすぐれぬ状況でしたが、遂に本年5月下旬、これまでの人生で一度も経験のなかった失神を経験(初回のみ外傷で緊急外来)してからというもの失神を繰り返すようになり、「こわごわ」の日常生活におちいりました。精密検査の結果、7月にペースメーカーの埋め込み手術を受け、その後は失神症状はなくなりました。外科手術は、実に1976年5月のドイツでの盲腸手術(病室は2人部屋)以来のできごとです。病室は個室で、毎食食べ足りないと、看護師にこぼすほど食欲旺盛でした。
術後は激しい運動を控えること等の制約がありました。その後徐々に日課の体操(体幹運動はとりやめ。ラジオ体操1~3、自衛隊準備体操、陸自・空自体操、海自第1体操、自衛隊式肩甲骨ストレッチ)を当初は部分的にカットしたり休み休みでしたが、術後3か月以降は、1セット30~40分を間断なく日に2サイクルやれるまでに回復しました。11月の定例血液検査も、オールAに近い極めて良好な結果でした。その反面、ペースメーカー装着により体組成計の使用を禁止され、オムロンの単純な体重計を買いなおしましたが、その目盛りたるや一キロ単位と大雑把で、健康管理の役にたたなくてがっかりです。
この一年間、身辺で余りに多くの出来事があり、詳しく説明しはじめると、それぞれが『書斎の窓』(有斐閣)随想や『法学研究』の「研究ノート」1編になりそうで、以下では各項目、簡略にとどめます。
[Ⅱ]身辺での出来事
(1)相隣関係
南隣の土地建物を売りに出す際に、当家との境界確認が求められました。40年以上昔に両家了解のもと境界線上に当家負担でアルミフェンスを立てていました。仲介不動産屋がこれを「越境」といいがかりをつけ不愉快でしたが、買い主の建売業者がすべてフェンスを統一したい意向とのことなのでしぶしぶブロックフェンスを撤去し、撤去後のアルミフェンスは当家で再利用すべく保存しました。その後建売業者が設置した境界ブロックフェンスは、「自治体の指導があった」と称して境界線からさがり過ぎており、境界線が一目瞭然でなくなりました。他方、東隣地(2筆に分筆された南側)と南隣・当家とは90センチメートルの高低差があるものの、東隣地による盛土により高低差が縮まり、おまけに除草対策とかで境界線を覆うようにセメントを流し込んだため、宅地分譲時からの「境界石」(境界標)を目視で確認できない状況でした。結果的には、測量士が東隣地に立入り、セメントを掘ってやっとのことで境界標を探し当て、今後のために境界標を筒で囲ってもらいました。今回の件で民法の逐条書・実務書を調べたところ、法典はカタカナから平仮名になったものの、現在の「大衆土地所有者」時代の規範としては役立たず、古き良き時代の産物と感じました。また境界線と建物(外壁ではなく、基礎の中心線)からの距離が、(分筆前の木造東隣のように)50センチメートル(民法233条1項)というのは、防災上時代遅れではないでしょうか。
加えて第一種低層住居専用地域(旧・一種住専)の高さ制限10メートル(建築基準法55条)は過大な数値に思えますが、近時は屋根裏物置をつくり、9メートル前後の高い屋根が当たり前になり、時代の移りかわりを感じます。
(2)特例許可の意見聴取(建築基準法48条15項)
用途地域内の建築物の制限(建築基準法別表第2)を免れるための「特例許可」に際しては、「利害関係を有する者の……公開による意見を聴取」(同法48条15項)と「建築審査会の同意」が必要になります。
幹線道路沿いの造園屋とガソリンスタンド等の跡地を購入し更地にした外車販売・修理経営者が、準住居地域(旧・住居地域)の150平方メートル未満(法別表第2(ニ)二号)のほぼ倍増で合計300平方メートルの修理工場への拡張を計画した事案です。これに先行して、許認可不要の立体駐車場建設の工事中でした。修理工場拡張は「公益」とは無縁なので、「住居の環境を害するおそれ」の有無が特例許可の決め手です(法48条7項)。我が家(第一種低層住居専用地域)は係争地から周囲100メートルなので、利害関係者として町内会のもう1名(準住居地域)と意見聴取に応じました(前掲の失神・外傷の2日前)。のちに本事案に建築審査会の同意が下り、特定行政庁が許可したとのことです。
本件で意見を述べた者としては、申請人との対峙の形式ではないこと、建築審査会委員の面前ではないこと等に不満が残ります。また、都市計画法の用途地域ゾーニングの矛盾点、幹線道路裏側の準住居地域が第一種低層住居専用地域と生活道路を接して向かい合うという「いびつさ」を感じます。その後立体駐車場1階は中古車展示場になっています。
(3)総合病院の移築
駅前の総合病院を周囲が住宅地の旧清掃工場跡地に移転させる計画案があり、4月下旬説明会に出席しまして、5月に意見ないしコメントをまとめ市及び病院関係者に電送し、その写しを連合町内会長に手渡していました。つい先日、彼と郵便局前でばったりと出会い、「ほぼ[あなたの]意見書提案を呑んでくれた」とのことですから、意見書作成の甲斐があったというものです。
(4)公園への区内倒木一時保管
居住地から見上げる崖の上の配水池の上部公園が2004年日中開放されて以来、同公園管理をめぐる市(区)との連絡会の構成員をつとめています。2021年に自治体から、災害時の区内の倒木を上部公園で一時保管すると報告されたのに対して、自治会は配水池の水瓶は脆弱で配水池健全確保の危惧、車両で坂道を運搬することの脱炭素政策との矛盾等の懸念を表明しました。幸い水道局の反対もあって、翌2022年には一時保管区画の大幅縮小、2023年には「方面毎に候補地」として区内倒木を分散保管することになりました。残る問題は、当公園は、倒木保管による事故・失火・放火の防止のため倒木保管時は公園を全面封鎖する筈ですが、運動団体の週末の運動公園利用は例外という二枚舌です。運動団体まかせで本当に安全性が保たれるのかは極めて疑問です。運動団体には某議員の後押しもあるらしく強気のようです。
(5)その他社会的貢献
東京コミュニティ財団の助成委員会は、電話回線によるリモート会議で引き続き参加しています。
[Ⅲ]執筆
(1)加除式追録
『地方自治法』(加除式。第一法規)は、今年若干の法改正があり、追録を執筆しました。
(2)論文
先便で「ウクライナ戦争によるエネルギー危機」の執筆準備と述べました。Internet Explorerへのサポート中止後、PC(パソコン)を使いずらく、加えて5月下旬以降、PCから遠ざかっており、PCが休眠状態から覚めず、しかも「ウィンドウズ8」のサポートも中止され、Web経由の情報は手つかずの状態になりました。おまけに読書用眼鏡も壊れ、いつもの遠近両用眼鏡では、資料読取りやワープロ打ちも不自由です。正月明けには、PCと読書用眼鏡を新調するつもりでいます。
1977年エネルギー法旗揚げの4年前とはいえ、1973年「石油危機」を体験してきた身ですから、「ウクライナ戦争によるエネルギー危機」にとどまらないで「石油危機半世紀」を含む論考は執筆可能と気をとり直して、戦列に復帰すべく、執筆準備として書斎の文献をあさり始めました。時折、メモが追いつかないスピードで、泉のごとく文章が断片的に湧きでてきます。これまで意識したことはなかったのですが、これら文章を論文としてまとめ上げるのには、根気や馬力が必要なのだなと、改めて実感させられる今日この頃です
[Ⅳ]おわりに
感染症法上新型コロナ(COVID -19)が5類に格下げとはいいつつ、まだまだパンデミックで終結宣言は聞かれません。岐阜県在住YouTuberの「ラジオヤジ」も、新型コロナ後遺症で苦しんでおり、彼も「気の緩みは大敵」と感染症へ警鐘をならしていました。新型コロナ以外にも、季節性インフルエンザ、溶連菌感染症等のリスクもあり、対面のゼミOB会の開催には、慎重に考えています。
ちなみに歌のほうは、CATVアプリでYou Tubeを視聴しており、クリスマスキャロルや「六甲おろし」を口ずさみますが、音程が確実に下がっており、往年の歌唱力はどこにいったのかと幾分寂しくなります。
それではゼミ生諸君、健康に留意しつつ、よき1年をお迎え下さい。(2023年12月31日・記)
[追記]
2024年元旦に襲った能登・北陸地方の地震。ゼミ合宿で、金沢市(宿泊及びヒアリング)、珠洲市(宿泊及びヒアリング)、七尾市(火力発電所見学)等石川県を数回訪れており、ゼミとも関係が深いだけに、心を痛めています。被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。(2024年1月2日・記)