近況報告 2015年11月30日
○ 藤原研究会(藤原ゼミ)卒業生の諸君、その後お元気ですか。クリスマス前の降臨節(Advent)に入り、今年も残り少なくなりました。恒例の所感と本年下半期の報告です。
『情報公開等審査会答申事例集』
○ シンポジウム出席: 11月4日(水)、次世代電力ネットワーク研究会と東京大学先端電力エネルギー・環境技術教育センターの共催シンポジウム「電力システム改革の全貌およびポイント」に出席しました。経済産業省資源エネルギー庁電力基盤整備課長安永崇伸報告「電力システム改革の全体像」に対して、フロアから事前登録が開始された小売電気事業の「供給能力を確保できる見込み」(電気事業法2条の5第1項4号)の審査方法について質問しました。それ以外の本年3月解散のESCJ(電力系統利用協議会)「ルール策定委員会」の委員仲間であった電源開発(EPDC、Jパワー)寺島一希氏(現・電力広域的運営推進機関理事)、中部電力平岩芳朗氏(現・同社執行役員流通本部系統運用部長)のお二人、日本卸電力取引所企画業務部長國松亮一氏、東京電力執行役員佐藤梨江子氏らのプレゼンテーションに対しては、休憩時間の個人的質問にとどめました。
○ 安倍総理の鶴の一声で携帯電話料金引下げが検討されています。携帯電話料金は電気通信事業法上「非規制」ですから、これに口出しすること自体が異常なことです。わが国ほど高度利用の国はおそらく稀で、決して割高ではないはずです(11月15日付日本経済新聞11面の鈴木幸一氏談参照)。いまや「ケイタイ」は、音声、データ・画像の送受信、画像送受信、音楽・ゲーム、決済機能等、一人何役もこなす「複合」サービスです。課金代行分を含めて多機能携帯電話の請求額が高いのは至極当然でしょう。ちなみに音声及びショートメール利用限定「簡単・ガラケイ」の月間利用料金は一台1,000円を切り、さほどの負担感はないと思われます。
有識者会議の結論は、どうやら利用料金そのものではなく、機種購入割引の点に集中砲火をあびせるようです。実質0円での買い替え優遇策は、これまでにも総務省から指摘があったところですから、奇抜な結論でもなさそうです。日本型ビジネス・モデルの修正と意気込んでいるようですが、実質0円には新機能・新機種の普及促進の意味もあったので、そう単純に割切れる話でないようにも思われます。
家計直撃で深刻なのは、このような贅沢品の「ケイタイ」料金ではなくて、生活必需の生鮮食料品のじわじわした値上りです。旧西ドイツ及び米国NY州で自炊した経験上、わが国の「食材費」は余りに割高です。総務省から食料品を除く消費者物価が公表されに至っては、なんのための統計なのか首をかしげたくなります。消費税引上げに際しての軽減税率をめぐる財務省や自民党の諸提案は、いかに生活実感、庶民感覚に乏しいか、驚くばかりです。たとえば加工品は子育て及び高齢者によって必需の食材です。いわゆる三党合意を根拠にした「軽減税率は『社会保障と税の一体改革の枠内』」(11月26日付日本経済新聞4面「Q&A」参照)の議論は、他の財源等から軽減税率による減収分を補填するということと必ずしも矛盾しないような気がします。来月中には妥当な結論が導かれることを望むばかりです。
「食材」に関連した話題として、政権は畜産や野菜を対象にTPP国内対策に躍起です(11月24日付日本経済新聞夕刊1面)。天候・気候に左右されすぎる野菜、資源希少化・国際的漁獲量制限に円安が追い討ちをかける魚について、品種改良・養殖等を含む革新的技術開発も推進しつつ「安全・安心な野菜や魚の供給量を確保し、かつ価格を安定させる」政策の一層の強化を期待します。
前回の消費税引上げ時に腹立たしかったのは、消費税転嫁にかこつけた便乗値上げです。税率5%から8%への引上げの差額3%の値上げにとどまらず、税抜き本体価格を一気に8%値上げした業者が続出でした。生活必需品はボイコットもままならず、家計を圧迫し、全国的に消費マインドが冷やされました。このような愚行を繰り返させてはなりません。
○ 安倍総理は「一億総活躍」の標語を掲げました。戦時中の「一億火の玉」「産めよ増やせよ」を彷彿させます。
11月13日付日本経済新聞3面「一億総活躍へ緊急対策案」を読む限り、定年退職者が、TVごろ寝、庭木いじり、犬の散歩、生活防衛のためのチラシ片手に生鮮食品特売あさりの毎日で、「貴重な人材」を死蔵させ「社会的損失」であるという現状が視野に入っていません。自治体なりNPOマターかも知れないが、経済的理由等で塾通いできない難関校進学希望者・成績不振者に対する有償又は無償での個別指導が可能な人材は、(老害の弊害は要注意ながら)豊富なはずです。定年退職者に「生きがい」を与えてこそ「要介護」リスクを低減できるというものでしょう。学習塾に丸投げしている自治体もあり、「学習塾の経営圧迫」論が想定されます。しかし本件はいわば「隙間商法」ですから、「市場拡大」型提案であり、決して「ゼロ・サム」ゲームではないと反論可能です。より根源的には、「男女差別」ほどには意識されていないものの、「新陳代謝を促し若手に『活躍』の場を与える」との殺し文句で個人的特性・個人差を無視した「定年制は『高齢者差別(age discrimination)』」ではないかとの問題意識が欠落しています。技術や文化、ノウハウが正当に継承されず、唯我独尊的な現役をにがにがしく思っている「隠居」は数多いはずです。私も退職後、非常勤講師のオファーは皆無のまま今日に至っています。本年度文化勲章受賞の東京大学名誉教授塩野宏先生や日本エネルギー経済研究所顧問十市勉氏からは、私が「教育現場から完全に去るのは『もったいない』話」と声をかけられ、これがせめてもの慰めです。
他方「人口減(少子化)対策」はこのところ日が当たる政策ながら、乳幼児期の子育て支援等の一部政策に偏っています。乳幼児の遺棄・殺害、児童生徒のいじめ自殺等、折角生まれた子供が成人に至らない悲しい事件が続発しており、子供が成長できるソフト面を加味した総合的施策の視点は弱い気がします。
○ 熱波による炎暑の8月9日(日)に、学部民事訴訟法ゼミの恩師で公私ともにお世話になった名誉教授石川明先生を「偲ぶ会」が、高輪のホテルで開催されました。6月10日に逝去されたのですが、密葬だったため開催通知を受け取るまで知りませんでした。本年3月に事務所移転の挨拶状を出したところ、先生からご丁寧なお返事を頂戴したのが最後でした。偲ぶ会で加藤修名誉教授(ゼミ1期後輩、塾助手採用1期先輩)の顔をみつけました。JR新橋駅東海道線下りプラットホームでたまたま出合って以来ですから、およそ1年ぶりかと思います。石川先生の思い出や近況交換に話が咲きました。彼はいつも元気いっぱいで、大いに励まされます。石川先生は日頃「門下生にいろんな分野の人間がいる」と自慢されていましたが、「偲ぶ会」は民事訴訟法関係者主導で、少し寂しく感じました。
○ 11月22日(日)、塾助手就職以来ご指導いただいている名誉教授金子芳雄先生の卒寿を祝う会が高輪のホテル内レストランで開催されました。大学院門下生7名が集いました。先生からは、「今や70歳台は現役で、80歳台もその延長。老後は90歳から」と、弟子を励ます力強いメッセージをいただきました。
[研究アウトプット]
○「(町内会長がみた行政法⑤)電力の地産地消」自治実務セミナー639号62~64頁(9月)
○「(町内会長がみた行政法⑥)プレミアム商品券」自治実務セミナー642号66~69頁(12月)
○ これまでいちいち記しませんでしたが、ほぼ例年、以下の加除式追録を執筆しています。
『地方自治法』(第一法規)『情報公開等審査会答申事例集』
[学会・研究会活動]
○ 9月11日(金)、次世代電力ネットワーク研究会第30回検討会として東北電力・西仙台変電所蓄電池実証設備見学会に参加予定でした。当日朝、東北新幹線はダイヤ通り動いていたので家を出ましたが、東京駅への車中で「豪雨のため中止」の連絡を受け、仙台出張を断念しました。
○ 10月17日(土)、白鴎大学で日本経済法学会シンポジウム「ネットワーク産業の規制改革と競争政策」が開催されました。予稿は日本経済法学会年報36号(有斐閣,2015年10月)に掲載済みで、熟読のうえ質問状を作成し当日にのぞみました。例年通りフロア質問要員として、(ゼミ卒業生)日本大学教授友岡史仁報告「電気事業の規制改革と電気事業法上の中立性担保規制」に対し電力取引監視等委員会の管轄問題、上智大学教授古城誠報告「ガス事業改革の目的と特徴」に対し大手三社の導管部門の法的分離の是非、報告者提唱の卸取引規制の法的根拠について質問しました。「複数サービスのセット割引の競争法上の論点」も予定していましたが、余りに先の話なので司会者へ提出する質問用紙への記載を見送りました。
○ 公益事業学会政策研究会(電力)が11月26日(木)再開されましたが、事情で欠席しました。同研究会の3月17日(火)シンポジウム「討論記録・電力システム改革の展望と原子力の国民価値」が公益事業研究67巻1号19頁以下に収録されました。フロアからの藤原発言(26頁あたり)はカットされました。
○ 11月14日(土)、電力中央研究所(大手町)での公益事業学会関東部会に出席しました。帝京大学橋本悟専任講師の「都市ガス小売市場の寡占化の問題」報告で「英国ガス市場でスポット取引のみで調達の企業(OVO Energy)の存在がわが国でも参考になる」との提言に対して、「わが国小売登録制度のもとでは、全量スポット取引による調達では、電力及びガスの登録は認められない」とコメントしました。電力については電力中央研究所丸山真弘報告「電力システム改革の現状と課題――小売り全面自由化実施を控えて」がありました。
[講演会・セミナー等]
○ 講演会講師: 9月10日(木)早朝、「電力・ガスシステム改革の課題」と題して、「民主党」経済産業部門電力・ガスシステム改革フォローアップワーキングチーム(WT)で講演しました。私が講師に選ばれた経緯は詮索しておらず、未確認のままです。
○ シンポジウム出席: 10月29日(木)、日本ガス協会「ガスの日記念日シンポジウム2015『総合エネルギー企業へ、いま加速する日』」に出席しました。私は、昨2014年3月の公益事業学会政策研究会シンポジウムでも指摘したことですが、安易に「総合エネルギー企業」を唱える風潮を憂慮していました(公益事業研究66巻1号102頁参照)。今回、静岡・日本海・東京のガス3社の経営戦略を聞いて、電力会社を上回る積極的経営多角化(小著『エネルギー法研究』54頁以下参照)にさらに磨きをかけ「統合(integrated)サービス&ソリューション提供企業」という意味であれば、納得できるように感じました。
○ セミナー出席: 10月30日(金)、新社会システム総合研究所「環境エネルギービジネス交流会『電力自由化時代における新たなビジネスの可能性』」に参加しました。エルデザインの坂越健一CEOのプレゼンのあと、交流会がありました。「日本の明日を考える女子学生フォーラム」(http://ywtl.web.fc2.com)の学生が参加したというのが交流会としての目新しい企画です。エネルギー問題に関心がある学生の存在は、今後の日本のためによろこばしく、また頼もしい限りです。私は、数名の学生とも意見交換をしました。およそ2年半ぶりに大学教師に戻った感じがしました。
○ シンポジウム出席: 11月4日(水)、次世代電力ネットワーク研究会と東京大学先端電力エネルギー・環境技術教育センターの共催シンポジウム「電力システム改革の全貌およびポイント」に出席しました。経済産業省資源エネルギー庁電力基盤整備課長安永崇伸報告「電力システム改革の全体像」に対して、フロアから事前登録が開始された小売電気事業の「供給能力を確保できる見込み」(電気事業法2条の5第1項4号)の審査方法について質問しました。それ以外の本年3月解散のESCJ(電力系統利用協議会)「ルール策定委員会」の委員仲間であった電源開発(EPDC、Jパワー)寺島一希氏(現・電力広域的運営推進機関理事)、中部電力平岩芳朗氏(現・同社執行役員流通本部系統運用部長)のお二人、日本卸電力取引所企画業務部長國松亮一氏、東京電力執行役員佐藤梨江子氏らのプレゼンテーションに対しては、休憩時間の個人的質問にとどめました。
[カラオケ]
○ 西野カナ「もしも運命の人がいるのなら」を覚えた矢先、9月9日に新譜「トリセツ」(=取扱い説明書)が出ました。後者は、披露宴新婦側余興にうってつけです。発売1か月ほどでTV音楽局M.on、スペシャ等の「カラオケ」5位以内、2か月弱で「歌詞検索」1位に入る勢いを示しました。披露宴招待のあてもないまま、早速マスターしました。
○ 絢香は「三日月」以来カラオケレパートリーからご無沙汰でしたが、「なくしたものを数えて瞳閉ざすよりも、あるものを数えた方が瞳輝き出す」という高齢者にぴったりの一節が気に入り、「にじいろ」を仕入れました。