近況報告(2018年8月31日)

○ 藤原研究会(ゼミ)卒業生諸君、今年に入ってからというもの、大阪北部地震、西日本豪雨等の災害続きです。お変わりありませんか?残暑とともにお見舞い申上げます。
 本報告は7月初旬頃執筆を予定していましたが、論文執筆に追われて、ついつい遅くなりました。

○ 3月25日付で予告の学会報告は[研究]及び[学会・研究会活動]欄で、5月23日付で予告の「ゼミOB/OG会」は[ゼミOB会]欄で報告します。

○ このところ、菅官房長官主導の携帯電話料金引下げが話題です。2015年11月30日付「近況報告」のときは、安倍総理の鶴の一声でした。これにより通信大手K社は携帯電話端末値引きの株主優待を総務省指導で廃止・縮小した苦い記憶があります。まさに「この道は、いつか来た道」です。
 田中角栄ロッキード事件のときに内閣総理大臣の「職務権限」の範囲が争点になりましたが、内閣総理大臣の行政各部への指揮監督権は閣議決定事項に限定され(内閣法6条)、処分・命令の中止権(同法8条)は例外的なものです。内閣府の長は内閣総理大臣(内閣府設置法6条1項)であり、官房長官(同法8条1項)ではありません。電気通信事業法上は規制対象ではない携帯電話料金に関しては、目下のところ内閣府の所掌事務(同法26条)には該当しない筈です。なのに「4割程度引下げ余地」と官房長官が声だかに演説するや否や、自民党総裁選挙立候補も噂される(過去に郵政大臣歴任の)野田総務大臣が「大きなエール」と呼応し、マスコミも今回の動きを「菅氏主導の携帯料金下げ」と報道解説する(8月31日付日本経済新聞4面)のをみていると、政・官・言論界「総忖度」の色合い濃厚です。
 携帯電話業界は、「5G」時代に向けて投資が必要な時期であり、その足を引っ張ることにならないか懸念されます。安倍内閣の「成長戦略」の旗印に逆行の人気取りのための特定企業群の「いじめ」の近いものに写り、政権は一体何を考えているのでしょうか。
 通信・放送行政に関して、官房長官は無縁または取るにたりないのかも知れないが、一高齢庶民としては不満があります。まず携帯電話について、PHS→ツーカーセルラー→AUと矢継ぎ早に転換させられ、しかもAUに移ってからも「4G」で従前機種が使用不可になり新サービスに追い込まれることによる負担増です。次の「5G」でまた同様のことが繰り返されそうです。つぎにTVについて、「地デジ」による受信機買替え、受信方法の変更が一段落ついたものも束の間、今度は東京五輪を口実に(?)、およそ見たくもないし関心もない「何とかK」とやらで、たとえばフレッツのスカパーは、「何とかK」を絶対見ない者(受益なき者)にも一律値上げと聞かされ、定型約款の変更要件(民法548条の4第1項2号)からみても腑に落ちません。なお似たような愚痴話は、ボン大学のシュミット=プロイス教授夫人からも聞かされたところです。


○ 自民党総裁選挙の争点に憲法改正、わけても9条改正が再浮上しています。2017年12月3日付「近況報告」(総選挙争点1)で述べたので中身は繰返しません。喫緊の課題でないことは確実です。


○ 言論界は安倍政権の積極的評価として、外交と経済とを挙げています。外交については、合計60か国超と歴代総理最高記録の外遊ですから、日本版ギネスブックものですが、このなかには森友・加計学園問題等で形勢不利と見るや国外逃亡的「外遊」も含まれています。外遊でいかに愛嬌をふりまき援助・紛争仲介等の口約束ができても、肝心のわが国の外交は、2015年COP21 でのパリ協定(地球温暖化防止)批准には出遅れ、また立て続けに2017年核兵器禁止条約と2018年海洋プラスチック憲章には、米国との共同歩調なのか署名や批准をせず、他国からひんしゅくを買ったり日本抜き(Japan Passing)という有様です。これらの行動について安倍政権は、国民に対して十分な説明責任を果たしていません。ある意味他国に顔向けできない度重なる失態の安倍政権の外交なのに、どうして肯定的評価なのでしょうか?企業でいえばESGの「E」(環境)「S」(社会)の両面で失格ではないでしょうか。ちなみに、「G」(ガバナンス)は、公文書の捏造等の文書管理のずさんさ、働き方改革・障害者雇用等のデータ捏造といった不祥事の連続で、これまた論外ではないでしょうか。
 他方、経済は、安倍政権による積極的な経済政策なり財政均衡策が効をそうしたというものではありません。たまたまこの時期、米中を初め世界景気が好調だったのと、黒田日銀総裁による低金利・マイナス金利の金利政策による円安誘導や日銀によるETF購入による株価下支えで幸運に恵まれただけのことです。このところの米国トランプ政権による貿易摩擦・途上国等信用リスクの増大により、そろそろ陰りが見え始めています。つまりこれまでの好況は、アベノミックスならぬ「クロダ」による低金利による円安「ダノミ(頼み)」と、世界好況の「神風」の「ミックス」(=「クロダノミックス」)によるものでしかありません。
 また民泊解禁の「住宅宿泊事業法」(平成29法65)にしてもカジノ解禁のIR法「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(平成28法 115)およびIR整備法「特定複合観光施設区域整備法」(平成30法80=『法令データベース』未登載。7月27日付官報)にしても、余りにも副作用への配慮に欠け、「観光立国」の旗印が「ただ儲かればよい」というメッセージにしか写りません。これでは全くもって「理念なき観光立国政策」という気がしてなりません。なお既報のように、民泊について「町内会長が見た行政法9・住宅地での『民泊』解禁?」自治実務セミナー2017年9月号58頁以下をご参照下さい。


[研究]

・エネルギー法研究
 6月の公益事業学会電力セションでの報告予稿・報告草稿・報告台本をもとに、「3・11以後の電力市場改革序説」と題して8月12日に書き上げました。『法学研究』91巻9号掲載が内定していますが、2号に分けて分載の可能性が濃厚です。


・アウトプット
○ 「(町内会長がみた行政法10)改正個人情報保護法と町内会名簿」自治実務セミナー2018年1月号60~64頁。
○ 「(町内会長がみた行政法11)公立図書館の未返却本」自治実務セミナー2018年9月号50~54頁。
○ 以下の加除式追録を執筆しています。
 『地方自治法』 (第一法規)
 『情報公開等審査会答申事例集』(ぎょうせい)


[学会・研究会活動]


・公益事業学会大会
○ 6月9日(土)10日(日)両日、一橋大学一橋講堂で公益事業学会が開催されました。
 建物に入り驚いたのは、一般公開(無料)の午後のシンポジウムを念頭においたらしく、学会員以外の人が大手を振って受付可能な窓口数列がまず目に入り、我々学会会員は、「ここではありません」と断られ、ごく隅っこの目立たない会員窓口受付列にやっとたどりつくという有様です。いくらプログラムの部分公開とはいえ、通常の受付では考えられない部外者への異例の「おもてなし」ぶりにあきれ返りました。
 先に予告のように、9日午前の電力セッションで報告しました。久し振りの学会報告で緊張したのか、終了時に疲れがどっと出たうえに、真夏を思わせる暑さでしたから、東京駅黒塀横町「奈可嶋」での昼食後は、午後のシンポジウムに戻る意欲も失せたため、家路につきました。

・公益事業学会研究会
○ 「政策研究会(電力)」に、引続き加わっています。


・本年秋の学会(予定)
○ 10月の学会、今年も名古屋大学での日本経済法学会(10月13日)が、専修大学での日本公法学会(10月13日・14日・両日)と重なります。前者経済法学会のテーマが「流通・取引慣行と独禁法」、後者公法学会のテーマが「公法解釈における『先例』と『原理・原則』」(私には意味不明瞭)です。
 後者公法学会が、「先例、原理・原則」を「所与」のものとして「受け身」の分析なのか、「先例、原理・原則」の定立のプロセスや中身の正当性・妥当性の検証を含めた「能動的(改革)」分析なのか、全体を通しての学会のスタンスが、今ひとつ不明です。
 いずれにしても、経済法よりは公法の方が幾分か問題関心に近いので、名古屋出張はあきらめ、上京を選択の予定です。


[社会的活動]


・弁護士会
○ 第二東京弁護士会では、引続き「情報公開・個人情報保護委員会」委員です。


・町内会
 2013(平成25)年度町内会長をつとめたあとも、2004(平成16)年発足の配水池の上部公園運営連絡会の町内会窓口役(兼司会・書記)を引き続きつとめています。この公園は、配水池増設後、国の多額の補助金を得て自治体が上部を都市公園にしたもので、我々の居住地の遥かかなた上に位置し、居住地(下界)からはいっさい公園の中を見通せないという危険きわまりない場所です。行政は当初「24時間開放」をいってきましたが、性犯罪、誘拐、暴走族の溜まり場等、犯罪の巣になることは必至なので応じることなく、妥協の産物として、片側を運動公園として整備し、週末・祝祭休日限定・利用団体限定の利用でスタートしました。その後も幾度となく「24時間開放」をいってきて、やむをえず日中のみ開放することに妥協するに際し、公園への防犯カメラの設置(こちらの要望は複数台だが目下一台のみで、心細い限りです)、車輛乗入れ禁止(車輛・歩道の分離出入り口設置。例外的乗入れ車は出入りの度に閉門)の2条件を提示、未解決の問題を含め定期的に協議する運営連絡会の設置も決まり、2004年から日中のみ利用可能になっています。
 昨2017年3月、週末の運動公園利用者のためと称して行政から公園上部に災害対応自動販売機設置の提案がありました。自治会は、公園ならびに住民の安全・安心の観点と、災害対応の観点から、公園出入口の外(水道局敷地内)設置の代案を出して交渉してきました。ところが昨年11月17日、行政は強行設置しました。自販機の飲料補充車両の出入りを、運動公園利用の週末に限り、運動公園利用団体に任せるので問題ないとのいいぶんです。そこで運動公園利用団体が公園の安全に責任を果たすかどうか話し合いの機会をもちました。彼らは、「運動する者は必ず水を持参する」というのですから、行政の自販機設置理由は詭弁にもならず、運動団体からのニーズというのは全くの口実(ダシ)に過ぎなかったのです。そんなことよりももっと大事なことは、彼らは公園出入口にいちいち人を張り付けられない(立会う者は危険にさらされる、門でチェックすると交通渋滞になり事故のもと)等として、車両門は開け放しで、上部の駐車スペースで関係車両かどうかをチェックしているというのです。運動公園は日中開放前から認めてきたのですが、当然のこととして、日中開放時の約束である出入りのたびに通行門を開閉するという原則は、彼らにも適用しないと、公園の安全・安心は保たれません。行政は「開けっ放しは駄目よ」と伝えたようですが、危機意識が共有されていなかったようです。これをどう埋めていって運動公園利用の週末・休日も平日なみの安全・安心を確保していけるか、引き続き行政と交渉を重ねる必要はあります。


[ゼミOB会]


○ 幹事の尽力で、7月21日(土)午後5時30分から、三田キャンパス南校舎4階でOB/OG会を開催できました。予定より国会会期が延びましたが同日は実質終了でした。およそ20~30名ほど集まったのではないかと思います。初めての試みですが、LAからネットでの参加者もありました(17時間の時差ですからLA側はさぞ眠かったと思います)。今年も出席者全員が持ち時間3分内での近況報告があり、まんべんなく出席者全員の消息を知ることができました。


○ 会場では、西野カナの昨年のアルバムから一曲、(自治実務セミナー2018年9月号50頁で予告の)「手をつなぐわけ(理由)」をアカペラで歌いました。もともと原曲がピアノ伴奏のみのスロー・バラードなので、カラオケよりもアカペラ向きだったと思われます。アンコール(?)の藤山一郎「東京ラプソディ」は、発声練習抜きで高音部分の声が出ず大失態でした。どうも自分自身、加齢により音程が以前より低くなっていくように思われます。

○ 二次会は「ウタヒロ(歌広場)」で7名参加のカラオケです。発声練習「トワイライト」(明菜)のあと、卒業生からのリクエストで「Zoo(愛を下さい)」「パープルタウン」「帰って来いよ」を歌いました。


△ 本年も機会があれば横浜茶会(tea party)を開催できればと考えています。


○ では諸君、次回(予定では年末)まで、さようなら。

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