近況報告(2018年12月7日)

○ 藤原研究会(ゼミ)卒業生諸君、今年も残り少なくなりました。8月31日付先便のあとも北海道の地震と、本当に今年は災害続きでした。被災地の方々にお見舞い申上げます。

○ 先月11月13日の閣議で、国民の祝日に関する法律(昭和23法178。以下「法」という)を改正して、来年4月末日の天皇譲位に伴い5月1日を一年限りの祝日にする法案が決定されました。この結果4月27日から「10連休」になります(法3条3項参照)。歴代の保守政権は、他国に足並みを揃える「メーデー」の祝日化に強い抵抗を示してきただけに、実に皮肉な話です。
 10連休による国民生活への悪影響を極力回避する策を同時に講じる必要があります。早い話、病院・医院・薬局等の医療機関が連休で10日間も診療・調剤がないと、たとえ持病持ちでなくても高齢者・乳幼児には不安でしょう。ましてや投薬のみならず定期的に透析・注射等の処置が必要な患者にとっては、ポッカリ10日間抜けるのは好ましくないし、連休前後、医療機関が受診者であぶれ異常事態です。したがって通常の「緊急医療機関」に加えて持ち回りででも患者の受入れ体制等に万全を期して欲しいものです。
 これまでわが国は休暇が少ないとして、やたらと祝日をふやし、おまけに慣れ親しんだ「成人の日」(1月15日)「敬老の日」(9月15日)「体育の日」(10月10日)が突如「月曜日」に引っ越し(法2条)、加えて「『国民の祝日』が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も『国民の祝日』でない日を休日とする」(同3条1項)と規定しているため、やたら「月曜日」が祝休日になってしまいました。このため「曜日で生活する」教育機関は、月曜日の授業をどうするか頭を悩ませ、大学では祝休日返上で授業をするありさまです。
 また郵便配達も気になります。現状土曜日は平日並みで、日祭休日は速達便等のほかは配達なしです。ところが「人手不足」「個人宛は主としてDMなので影響なし」を理由に土曜日も日祭休日並にする案が検討されており、これが実現すると「郵便配達も十連休」で、ますます「郵便離れ」が加速しそうです。
 わが国はすでに年間祝休日の日数は世界有数ですから、そろそろ見直す必要があります。国民の祝日に関する法律の一部改正の機に乗じて、由来ある「成人の日」「体育の日」等をもとに戻すこと(2条)と、3条1項を削除することを望みます。

○ 前回(8月31日付近況報告)携帯電話料金に関する官房長官談話を論じましたが、10月24日付日本経済新聞26面の実積寿也「スマホ料金問題の論点(上)競争促進の環境整備が筋」は、比較的客観的に論点を分析しており、好感が持てます。
 その後、話がますますエスカレートして、先月26日、総務省の有識者会議「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言(案)」は、携帯電話料金と端末料金との峻別や、販売代理店の届け出制等、新規制案を提言していて、Oh my God!。
 今月18日まで上記緊急提案(案)に対する意見募集中ですが、非規制領域への総務省の権限拡大は、「規制緩和」や「働き方改革」に逆行しますよ!

○ 海洋プラスチック憲章に出遅れた(8月31日付近況報告)こともあり、政府は遅ればせながら「いわゆる無償レジ袋廃止」を打出しつつあります。店舗側もレジ袋不要者にポイント付与(ダイエー等)や2円値引き(イオンマーケット)等の工夫をこらし、目先的にはプラスチック使用量削減にある程度の効果がありそうで、実は報道されない盲点があります。それはごみ(一般廃棄物)収集の仕方です。家庭ごみの収集現場では、自治体指定・自治体不指定を問わずビニル袋が使われます。生ごみ収集日だけではなく、分別収集でも、プラスチック収集、瓶・缶収集ですらビニル袋に詰めてくくって出すように指示されています。このように、家庭でのプラスチック使用量激減を目指すためには、ごみ収集方法とセットで考える必要があります。欧米で暮らしたときの記憶では、まず(旧西)ドイツ及びオランダでは、大きなポリバケツで出す方式なので、とくにごみ全体をビニル袋に詰める必要はありません。食品スーパーはレジ袋有料ですから通常買物袋持参です(海外出張時も買物袋必携)。百貨店等の食品売場以外はビニル袋に入れていました。自炊のNYでは、イサカ(コ-ネル大学)でもマンハッタン(コロンビア大学)でも食品スーパ-は店員が紙袋に詰めるだけです。水分により帰宅途中に袋が破けそうになって困ったものです。また商売道具の書籍については、ドイツの書店は、一時期「umweltfreundlich(environmennt friendly)」と称して布袋に詰めてくれていました(帰国後、いまだに使用しています)が、(最後の渡欧は2012年秋なので現状は異なるかもしれませんが)いつの間にやら書店もビニル袋に戻りました(布はコスト増?)。ちなみにわが国の「丸善」は、通常ビニル袋ながら、大量購入なら紙の手提げ袋(雨天ならビニルカバー付き)です。
 ところが10月24日付日本経済新聞14面は、人体から1人あたり最大9種類のマイクロプラスチックが検出されたと報じています。検査対象が8名と少ないものの、「全員がプラスチックで包装された食品やプラスチック容器に入った飲み物を摂取し・・・6人は魚を食べていた」といいます。「プラゴミ→魚→人体」が唯一のルートではないと推定されます。プラスチック製スロトーやレジ袋の燃焼によるダイオキシン削減効果は別として、市民レベルのスロトーやレジ袋だけではマイクロプラスチック対策としては余りに甘すぎて、八百屋、魚屋が新聞紙に、肉家が竹包みで商品をくるんだことを思い出しつつ、「食品包装全般」を改革するという課題をしょいこんだのです。
 なお今月28日まで環境省「プラスチック資源循環戦略(案)」が意見(パブコメ)募集中だそうです。

○ プロ野球の阪神タイガース、オープン戦最下位に始まり一時首位に立ちましたが、セ・パ交流戦以降は「ダメ虎」で最下位に終わり、監督更迭に発展しました。私はシーズン途中から、二軍を含め監督・コーチ陣総入替えによる再出発を望んでいました。
 守備位置ごとに計画的に選手獲得・育成の広島東洋カープとは異なり、投手当たり年の数年前のドラフト会議で投手を指名せず野手を一位指名したり、「補強」も安易な外国人頼みで、おまけに野手の場合の守備位置は、ドラフト1位入団の若手守備定位置を脅かすものだったりで、首をかしげる新人採用の連続でした。この結果、期待の若手野手は、コンバートされた慣れぬ守備位置での守備に神経を使い過ぎ、守備も打撃もさえません。補強外国選手には、豪雨広島被災地に百万円寄付する人柄が良い選手もいます。しかし不振でもクリーンナップでの先発起用不変、不安定投手でも勝利目前の継投起用で試合ぶちこわしという光景を幾度も目にし、「何故こうも他球団で活躍のお雇い外国人選手と違うのか」と疑問です。
 出塁すると、次打席が代打を送らない投手と分っていても、スリーバントを含むバント策オンリーなので相手球団に作戦を読まれていました。そもそもバントは、仮に成功しても、確実にアウトカウントを増やすだけで、無得点に終わるのも日常茶飯事でした。
 若手ベテランを問わず、打者は、同一試合はいうに及ばず同一打席ですら類似の球種・コースで空振り三振。打者の弱点が相手球団に完全に読まれています。また「ファーストストライクから積極的に」とのこころがけはともかく、安易に初球に手を出し、結果的に相手投手の省エネ投球にも貢献しています。
 捕手は、打者や相手球団ベンチやコーチの動きを観察することが大事です。ところが阪神捕手は、しょっちゅう自軍ベンチを気にし目障りです。ベンチもバッテリ-に過干渉のサインを送らずに、選手に任せるべきです。
 「若手育成」といいつつ、無意味に一軍と二軍を行ったり来たりで、空念仏に終わっています。この結果、阪神は若手を大事に育てないとして、ドラフト会議前に、阪神指名に対するアレルギー反応も噂されました(週刊新潮10月25日号)。これは球団にとって致命的です。監督の首をすげかえましたが、これまでの支離滅裂の人事(採用・先発起用)政策、入団後の確固たる育成方針の欠落、作戦・指導力不足の改善を切望します。他方、投手・打者自らがまさしく自分のこととして、Videoで真剣に自分の投球・打席を解析して修正をはかる「自助努力」につとめれば、現有戦力でも優勝はともかくCS(クライマックスシリーズ)に残る成績を残せるのではないでしょうか?阪神百貨店(東京では「大丸」)の優勝セールを期待していますよ。

[研究アウトプット]

○ 出版:以前『エネルギー法研究』(日本評論社,2010)のロシア語訳の話があったものの交渉不調でしたが、今回上海の華東理工大学法学部黄教授訳で中国語版『日本能源法研究』(ISBN978-7-5628-559-0)が、華東理工大学出版社から刊行されました。

○ 論文:8月31日付先便で述べた公益事業学会報告原稿をもとにした「3・11以後の電力市場改革序説」の分載ですが、前半「(1)」が『法学研究』91巻9号1~39頁に掲載され、後半「(2・完)」が刊行が遅れている同10号1~38頁に掲載されます。本論文は、日本大学野木村忠邦教授への追悼論文をかねています。

○ シンポジウム討論記録:昨年10月、専修大学での日本経済法学会・林秀弥報告に対して、ユニバーサル・サービス制度に関するコメントを述べたことは、昨年12月3日付近況報告に記しました。具体的な発言内容は、同所に収録しましたので、ご覧下さい。恒例により日本経済法学会年報39号に「平成29年度シンポジウムの記録」として掲載されています。ところが録音が不鮮明だったのか、「PSTN」を「PTSN」(131頁藤原発言10行目)、「政省令」を「推奨例」(132頁5行目)と置き換えられに驚いています。テレコムの専門家なら誤植と気付くにしても、一般会員には何のことやら意味不明な文章で「藤原はボケたか」ということになります。この種の専門特化のテーマに関する発言について、学会関係者が誰も草稿をチェックせず記録者の全責任として押しつけたとすれば、余りに記録者への配慮不足であるだけではなく、報告者・発言者の双方に対しても失礼な結果を招来したことになります。
 経済法学会での人生最後の「遺言」のつもりのコメントでした。日本経済法学会には助手時代に入会し、今村成和理事長を引継いだ正田彬理事長時代から舟田正之理事長第1期まで(3年任期で)連続7期=21年間の長きにわたって学会監事として裏方を経験してきた愛着ある学会だけに、最後の最後になって、前代未聞の学会誌ミスプリには正直失望の感です。

○ 加除式追録執筆:
 『逐条地方自治法』(第一法規)は、追録186号~を10月に執筆、提出しました。他方、『情報公開等審査会答申事例集』(ぎょうせい)法人情報の追録は、青木淳一准教授による準備作業(収録答申しぼりこみの前段階スクリーニング)を経て、収録すべき答申をしぼりこみ、追録を執筆して、締切日(10月末日)の5日遅れで提出しました。
 「二日か三日に一日」という普段のペースを守っていては締め切りに間に合わぬため、集中的にやりすぎて、そのあとあちらこちら身体にガタがきて、体調をすっかり崩してしまいました。このことから「生涯現役」というのは、「夢のまた夢」と悟りました。

[学会・研究会活動]

○ 10月13・14両日、専修大学(神田)で開催の日本公法学会に出席しました。本年8月31日付近況報告で、統一論題「公法解釈における『先例』と『原理・原則』」について「『先例、原理・原則』を『所与』のものとして『受身』の分析なのか、『先例、原理・原則』の定立のプロセスや中身の正当性・妥当性の検証を含めた『能動的(改革)』分析なのか、スタンスが、今ひとつ不明」と述べました。総会報告(の一部)及び第一部会報告を聞いた限りでは、後者に手がまわらず、前者の比重が高いという印象です。
 今年は「学会質問男」廃業のつもりが、まず初日総会での山本隆司報告「行政法の法理・解釈に関する裁判所の先例」に質問用紙を提出すべく、帰宅後、以下のようにワープロ打ちしました。

Q1:ご報告目次『V 最高裁の先例による法形成』にあるように、ご報告後半は、もっぱら最高裁判決について論じられている。ところで事案によっては、行政敗訴の控訴審判決に対して行政が上訴せず、控訴審で確定することがある。
 また最高裁まで持込まれた事件において、民事訴訟法上、上告(312条)及び上告受理申立(318条)の事由が限定的なこともあって、「ノーコメント」なのか上告審判決・決定日時が判明しながらも、判決・決定の理由が明かされないことがままある。これらの事案では、控訴審判決の「先例性」をどう評価することになるのか?

Q2:自明のことのようにも思えるが、本来は訴訟当事者に向けられた裁判判決について、その「先例性」をいうときに、裁判所(最高裁、下級審)、行政(行政事件なら通常は被告)、弁護士、研究者、メディアを含む一般国民の「すべて(all)」にとっての先例性として考察されたと思われる。
 ただ「先例性」は画一的なものなのか、それとも、たとえば判事、学者、弁護士、市民、行政官かといったおかれた立場によって、当該判決の先例性(拘束性)に濃淡の差が生じるということはないのか?

 2日目の質疑の前に、質問用紙にはQ1のみを記載し提出しました。Q2は、質疑時間に余裕のあるときのためにとっておきました。ところが2日目午後、司会者が質問用紙読上げ・報告者回答だけなので、Q2は「幻の質問」におわりました。この質疑は来年刊行『公法研究』81号に討論概要が掲載されますが、正直私の問題意識が報告者に正確には伝わらず、質疑が噛合わなかった印象です。すなわち山本回答は、「先例変更をめぐる論証プロセスを要求できるのは最高裁レベルのみ」「最高裁判所判例集の編纂により先例が蓄積されてきたという歴史的事実」の2点を論拠に、控訴審の先例性を否定しました。しかし前者質問の「先例の外延」と、山本回答の「先例変更[手続き・過程]」とは、次元の異なる問題です。だからこそ、Q2を用意していたのでした。
 山本回答が後者で判例集編纂をいうのなら、下級審民事[刑事]裁判例集、行政裁判例集をどう説明するのでしょうか、議論が逆転していないでしょうか?さらに法務省訟務局編集の訟務月報は、行政にとっての先例なのかでしょうか?少なくとも裁判所向けには、山本回答のように判例集重視ならば、「判例集の『判旨』記載事項のみが先例」(園部逸夫説)として、報告目次『III 先例の解釈と法律解釈の先例の構造』とむすびつけ、「『判旨』記載事項がRatio decidendi」と導く論法をどう評価するのでしょうか?以上のような疑問・疑義が消えないままに、山本報告への質問は不完全燃焼におわりました。
 2日目第1部会の川崎政司報告「議会と先例-議会法制における先例の役割・実態・限界」は「国民投票法案不受理事件」に言及されたため、当日手書きで質問用紙を提出しました。すなわち「上田哲事件は、所属会派の承認がないとして、金丸ルールにより議長が法案を不受理にしたもので、これは国民から議員に付託された議員活動を阻害するもので違憲ではないか?」という趣旨のものです。川崎回答は「違憲と断定できなくても憲法43条[1項]に抵触のおそれあり」と好意的でした。

[社会的活動]

○ 第二東京弁護士会では、引続き「情報公開・個人情報保護委員会」委員です。月例の委員会は例年午後開催でしたが、今年度は午前10時開始が多く、朝食に時間をかけ片道90分超えのため、午前開催月は滅多に出席できていません。

[ゼミOB会]

○ 横浜茶会(tea party)、7月のOB会に出席できなかった女性陣を中心に総勢7名で茶菓でみっちり3時間ものあいだ、勤務先の業務の環境変化、転職者の体験談、私の時事所感というよりむしろ本音こうじて時事放談等、さまざまな話に興じました。カラオケ付のため、最後に私が「帰ってこいよ」(恒例)と、7月OB会で披露の西野カナ「手をつなぐわけ(理由)」をうたいました。

○では諸君、次回(明年7月頃)までお元気で、さようなら。

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