近況報告(2019年11月5日)
○ ゼミ卒業生諸君、いかがお過ごしでしょうか。
地球温暖化のなせるわざか、わが国は「災害列島」化しています。台風15号及び台風19号の被災地の方にお見舞い申上げます。
台風15号のときの組閣人事といい、台風19号の爪跡が十分には癒えない時期の即位の礼といい、「何故この時期に?」と内閣の「危機管理意識」及び被災者への配慮のなさに驚かされます。台風15号被災地の激甚災害指定も後手にまわり、19号も迅速とはいえません。問題は、このような被災地への対応にとどまりません。異常気象によって今後想定外範疇の未曾有の災害が起こる可能性が噂されています。これらに備えて、河川管理、避難所を含む避難・救援・生活支援体制、道路・橋梁・港湾・溜め池等にとどまらず、電気・ガス・通信・水道等の生活必需サービスを含めたインフラ対策、「復旧」の在り方、救援・復旧の財源等について、政官民一体の検討と対策実施が急がれます。
災害後、内閣はインフラを含め「国土の強靭化」と聞こえのいい標語を唱えます。しかし国・地方公共団体の財源も民間資本もともに限りがあります。インフラ整備・復旧のために動員できるマンパワーも限られています。これらをどうやりくりしながら目標を達成していくのか道筋が重要になってきます。いささかマイナーな例として、(既に実施されているかも知れませんが)電気・ガス・通信・水道等の事業体に「災害時緊急対応準備金」「強靭化対応準備金」を積ませて全額非課税にするのも一案でしょう。
○ 塾の先輩方の訃報が相次いでいます。
(1) 栗林忠男先生をしのぶ会が7月13日(土)三田キャンパスで開催されました。私は倉沢、山田両学部長のもとで学部長補佐をつとめてきて、山田学部長後半は対外的(文部科学省、法務省、最高裁、弁護士会、他大学)も含め法科大学院構想にかかわり過ぎ、そろそろ研究生活に戻ろうと半年間の研究休暇に入る予定でした。ところが栗林先生と大森君から法科大学院構想も具体化されそうなので学部長補佐留任をと強く要望されました。そこで思い切って研究休暇を返上して、周囲を驚かせたものでした
ご遺族挨拶で、栗林先生が長年大病と闘病された有様をうかがい、胸をうたれました。
※ 栗林学部長の下での補佐時代、霞君と出席した自民党政調会朝食会で、私が法科大学院は「第三の開国」時代に「ゼロからの出発」とぶちあげたところ、鹿児島選出の大物国会議員から「気にいった」と喝采を浴びた武勇伝もあります。ちなみに法科大学院問題の私なりの総括は「いわゆるロー・スクール構想の虚像と実像」法学研究72巻12号53頁、「転換期の法学教育ー体験的行政法教育論」同79巻1号1頁、「事例演習教授法ー法科大学院行政法を中心として」同82巻3号1頁の自称「法学教育3部作」にまとめています。慶應義塾大学学術情報リポジトリ(KOARA)http://koara.lib.keio.ac.jp/modules/xoonips/>法学部>法学研究で閲覧可能です。
(2) 「根岸さん」と呼ばせていただいていた根岸毅先生の逝去を塾報で知りました。半世紀近く前の1970年4月、私が神戸大学大学院から塾に助手として戻ったとき、研究室 601号は敬称略で根岸、加藤修、坂原、藤原の4名相部屋だったと記憶します。根岸さんは話を始めると終わらないと周りから不評の声もありましたが、実にきさくな先輩でした。神戸での結婚披露宴には 601号全員を招待し、隣室 602号の森君に司会、根岸さんにスピーチをお願いしたのがついこの間のような気がします。また身近にALS罹患者がでたときには、「TV伝言板」で患者との意思疎通をはかった経験者としての根岸さんからお話をうかがったものでした。根岸先生退職記念の法学研究77巻12号に私は「行政法学徒から見た日本型民主主義の現状と課題」と題し寄稿しました。先に述べた慶應義塾大学学術情報リポジトリ(KOARA)で閲覧可能です。
(3) 塾経済学部から東大経済学部、さらに東洋大に勤務された植草益先生が逝去されたことを喪中挨拶状で初めて知りました。植草先生とは1989年資源エネルギー庁公益事業部長(当時)の「二次エネルギー利用効率化化委員会」が最初で、その後「ガス基本問題検討小委員会」「ガス政策委員会」「都市熱エネルギー部会」等の場でご一緒させていただきました。電力系統利用協議会では、植草理事長のもと、ルール策定委員会委員もつとめました。学問的厳しさのお顔の反面、人なつっこそうなお顔もみせられていました。それらの日々をなつかしく思い起こします。
○ 話かわって、私のようなデジタル・デバイド(
digital divide)「ネット難民」は、社会から置き去りにされつつあります。 消費税引上げを契機にJR東日本は、「スイカ」ポイント制をスタートさせました。インターネット経由の登録が要件のため、恩恵を受けられません。昨年あたりから「丸善」のポイントも同様です。 また「ペーパーレス化」の流れで、NTT東の請求・領収書の郵送は、有料化されています。その点イオン・クレディットは、後期高齢者に無条件で明細書郵送を継続するので、好感が持てます。
4月から第二東京弁護士会・情報公開個人情報保護委員会は、資料の席上配付をやめ、全て事前のネット配信に切替えました。会議当日はPCかタブレット端末持参です。このため、今年度すっかり足が遠のいています。
○ 次に、デスクワークやTV視聴等でとかく運動不足のため日常心掛けているメニューを披露します。さほど負担にならない適切な代替案やアドバイスがあれば、是非とも教えて下さい。
(1) 自宅から2キロ弱ほぼ平坦な道のりで駅前スーパーまでショッピングカートを引きながら散歩しています(極力往復歩きを心がけていますが、帰路のみ敬老パスでのバス乗車もあります。花粉ピーク時はマスク着用)。低脂肪(1%)生乳にこだわる余り、9月頃までは丘を越え起伏の激しい自宅から2キロ半弱の隣駅のスーパーにも足をのばしていました。メインのスーパーの目安箱に品揃え希望を投入したところ、ほどなくして希望がかない、晴れてワンポイント・ショッピングが実現しています。
ショッピングカートで思い出すのは、1985年夏学期ドイツ月沈原(ゲッチンゲン)滞在時です。宿舎は大学及びスーパーから距離があったため、ショッピングカートに原稿用紙と文具・文献を入れ、帰路は買い物後の自炊の食材も詰め込みました。ゲッツ(Goetz)教授は「ショッピングカートを引いて歩くのは、老女(alte damen)と藤原君くらいのもの」と、通勤途上出くわす悪餓鬼と同様、私をからかいました。
(2) 夏の炎暑は平気ながら、散歩できない悪天候も想定して、屋内での運動として、ショップ・ジャパンで購入の西野カナの歌ではないが「ナイスデイ」と称する足踏みペダルを使っています。TVのCM以上にグ〜ンと力を加えないとビクともしません。夏場は1分間百歩を目安にしていますが、気温のさがる秋・冬場は特に厳しく、1分百歩には到底達しません。散歩できなかった日は、散歩した日よりも長い時間ペダル踏みをします。冬場以外は直後汗だくになり、浴室直行です。
(3) 入浴中の自己流体操。さらに入浴後の新聞拡販景品「血行王子」(=軽い勾配あり足裏のツボを刺激する)に乗っかり(両手に水を張ったペットボトルを持って)の自己流体操です。
[ 学会・研究会・シンポジウム ]
退職後は学会・シンポジウム等出席は自弁のため、首都圏近郊はともかく遠方での開催は、正直負担に思えるようになりました。
○ 2019年7月23日(火)午後、公益事業学会関西部会・経済産業省近畿経済産業局主催「関西エネルギーシンポジウム:公営都市ガス事業の民営化」が大阪市・中央電気倶楽部で開催されました。当日東海道新幹線で移動し、会場まで地下鉄御堂筋線梅田駅から地下道を歩いたものの、方向指示の標識が分かりにくく、とても苦労しました。汗だくで定刻2時寸前に会場に滑り込みました。
かつて「公営ガス事業のいわゆる民営化について」公営企業2002年9号2頁、「公営ガス事業の民営化の課題」公益事業研究55巻2号 101頁(2003)で事業譲渡方式、選択肢としての独立行政法人化・業務運営委託とを比較考察しました。当時から業務運営委託が普及している(今回の穴山悌三報告)ものの事業譲渡が主流でした。
ところが大津市は、本年4月、ガス事業施設の所有権を市に残したまま運営を新会社に任せる公設民営方式、別名平成23年PFI改正による公共施設等運営事業権、いわゆる「コンセッション方式」に踏切りました。公営ガス民営化検討中の金沢市、(過去に幾度か私自身単身訪問したことのある)仙台市等では、従来の事業譲渡とならんでコンセッション方式も選択肢として挙がっています。このような背景のもとで、福井市(事業譲渡)、大津市(コンセッション方式)の事例を素材に、研究者及び自治体ならびに事業者のプレゼンを受けて公営ガス事業の民営化を議論したシンポジウムでした。大津市といえば、昔、判例評釈「通産大臣の認可を受けた公営特約ガス料金と、地方公営企業条例主義との関係」判例評論 320号(1985)を執筆したことを思い出します。
シンポジウムでの「コンセッション方式」に関する個人的感想・疑問を述べてみます。第1に「条例で料金上限等を設定できるから、現在の[大阪ガスよりも]低廉な料金水準を念頭に置いた上限を設定することも可能」(大津市企業局プレゼン)というのが「コンセッション方式」採用の決め手の1つだったかと思います。何やらかつて道路占用をめぐる自治体と電力・ガスとの報償契約(藤原淳一郎『エネルギー法研究』29頁。[初出・1990]日本評論社2010)を想起します。それはともかく、市との契約内容全体を知り得ず当日開示の断片的資料からの推測にとどまりますが、料金上限についての条例改正の要件はかなり厳しく、条件充足の有無・幅の認定等、将来問題発生の余地もありそうです。第2に、地震対策・経年管対策等を含むガス導管の維持責任・費用のリスクからは事業譲渡の方が気楽ではないかとの疑問を感じます。導管事業者(市)の収入である託送料が、上記リスクを上回るほど魅力的なのかどうか、どう考えても釈然としません。
シンポジウムのあとの交流会では、主催者が学会であることに加えて、ざっくばらんな関西人気質も手伝ってのことでしょうか、事業者の方から「これら情報抜きで民営化問題は語れない」というほどの重要なオフレコ裏話をいくつか耳にし、非常に参考になりました(オフレコなので内容はここでは記せません)。交流会の帰路、大丸梅田店14階イタリアンレストラン「アルレッキーノ」で魚介サラダを食し、一息つきました。
○ 日本公法学会が10月12日(土)池田市民文化会館、13日(日)大阪大学で開催されました。12日は台風19号の影響もあり、宿にこもって読書及び客室ホームシアターで「北の桜守」等で過ごしました。サハリン引揚者を描いた「北の桜守」で主役吉永小百合演じる母親の次男役は、およそミスキャストと感じました。
学会二日目13日は天候も回復、過去に何度か歩いた阪急石橋駅から大阪大学豊中待兼山校舎までの道のりを早足で歩いたものの、こんなに距離がありかつ急坂だったことは記憶外でした。
今回は第1部会に出席し、いつものように存在証明として質問用紙を提出しました。なおパラレルセッションの第2部会では、塾法務研究科で「行政法」の受講生だった寺田麻佑報告「人工知能(AI)技術の進展と公法学の変容」がありましたが、体がひとつしかないため、聴講及びコメントの機会を逃しました。
近時部会の司会者は、提出された発言用紙をさばくのがやっとで、会員は用紙提出のみで発言を極力控えるのが暗黙の了解事項でした。おまけに今年は私のペーパーは随分省略して紹介されました。ところが東大現職の司会と会員1名は、用紙提出なしで用紙要旨ならぬ口頭でのフル質問が許されました。
シンポジウムの記録は明年発行の公法研究82号に掲載予定ですが、以下私の発言用紙要旨及び必要最小限のコメントを記します。
(1) 柴田憲司報告「縮小する社会と生存権」に対して、報告中「世代間格差」が指摘されたが、「世代内格差」も見逃せないと指摘しました。具体的には後期高齢者世代間でも、給与所得者は現役時代の「964(クロヨン)」「931(クサイ)」と呼ばれる中小企業経営者・農業従事者に比べ抜群の所得捕捉率だったことをひきずり、介護保険料、健康保険料が割高の負担です。また、介護保険・健康保険の給付内容は「持続可能性」を無視したものになっているように感じられます。これらは「公平・連帯」の観点から問題であると指摘しました。
※ 学会後10月24日(木)のCS日経CNBCの番組「ラップトゥデイ」で世界の年金ランキング Melbourne
Mercer Global Pension Indexが紹介されました。わが国は37か国中なんと31位で、ことに「持続性」の評価が低いとのことです。そういえば国民年金収入から信じられない非採算の保養所を建設した責任を問い、歴代社会保険庁長官(最高裁判事も輩出)に退職金を自主返納させる話がどうなったか、その後一切報じられません。最近では本年10月の消費税引上げによる歳入を何に使うかというと、「百年の計」として「年金・医療(健康保険)・生活保護」の福祉三本柱を持続可能な強固なものにするために用いることを考えずに、政権は幼児教育・高等教育無償等の新たな福祉プログラムを立ち上げるようで、失望の巻きです。(岩熊俊介「消費税引上げと地方財政」自治実務セミナー2019年11月号16頁参照)。これら新たなメニューそれ自体は意味のあることながら、限られた福祉財源の配分において福祉三本柱の持続可能性確保をにらみつつ、緊急度・切実度による優先順位をどうつけるかの政策判断過程・決定過程の透明性確保や説明責任がおざなりにされており、残念です。
(2) 正木宏長報告「公共事業の持続可能性ー水道事業の担い手に着目して」に対して、冒頭、需要減、インフラストラクチャーの老朽化及び耐震対策等のため投資の継続性の必要といった水道事業の抱える課題は、事業主体の公私を問わないし、報告にある住民自治だけでは解消しないと指摘しました。
※ 学会後の2019年10月29日付日本経済新聞39面は、「水道施設、水害リスク露呈」として、厚生労働省調査で浸水想定区域にある全国の水道施設の8割が防水扉など未整備という災害リスクを報じている。
そのうえで以下の4点質問をしました。
第1に、コンセッションにとどまらぬ完全民営化(事業譲渡)を現行法は予定していないか?第2に仮に完全民営化すると、これまでの地方債の残債(償還)はどう処理されるか?第3に赤穂市のように川からの取水で賄え水源確保に困らない自治体は別として、広域的水源確保は完全民営化しても可能か?第4に内海麻利報告「『縮退型』都市計画における都市計画法制の課題と論点」にもある「都市のスポンジ化」を前にして、報告者が引用の長野県上田市の実例も参考にして、当該市町村の全域一体での「水道事業」ではなく、簡易水道、小規模水道等様々な事業形態を併存させ、いわばナショナル・ミニマムの水準を下げるのも一案ではないか?
なお報告者は「水道事業にコンセッションの実例はない」と断言したが、私は7月公営ガス民営化シンポにおいて、大津市は、ガスのコンセッションの際、水道もセットしたとの情報を得ています。
(3) ゲストスピーカーの塾経済学部井手英策報告「社会はなぜ引き裂かれたのか−社会保障、生活保障、その先へ」に対するQ&Aを聞いて、中休み(休憩時間)に感想と質問を提出しました。第1に感想として、「中間層への配慮不足」は全く同感で、XX内閣のときの「ぶ厚い中間層」構想にも、民社党時代から続く「福祉国家」構想にも逆行します。
第2に井手教授の消費税増税論について私見は、
1) 消費税の逆進性緩和のため低所得者対策として、食料品と電気・ガス・水道等の生活必需サービスは税率をゼロないし五%にとどめること。
2) 直間(直接税と間接税)比率の見直しの文脈
という条件で賛成ですが、この条件をどう思われますか?
上記第2の質問への井手教授の回答に対して、私は容易に反論可能でした。残り時間を考慮して、追加発言を断念し、ここに教授の回答の概要(A)と、私の反論(Q)とを記します。反論は2019年7月12日付近況報告の1頁で述べた時事問題への感想を敷衍したものです。
1) 軽減税率の拡大
A: 金持ちであろうが低所得者であろうが、食料品も公共料金も同様に支払うので、軽減税率ではなく、生活補助等の社会保障でまかなうべし。
Q: 食料品や必需サービスへの支出は、高所得者の(可処分)所得への割合はさほどではなくても、低所得者にとって遥かに負担割合が重いため、効果はてきめんで計り知れなく、軽減税率は有効です。教授のいう補助金支給等には、線引き及 び支給事務のために自治体は煩雑な事務量とマンパワーを要します。反面、軽減税率であれば実に効率的に目標達成可能ではないでしょうか。
2) 直間比率見直し
A: 直間比率は国によってまちまちで、これといった基準も何もない。それよりも所得税における優遇税制や964(クロヨン)といわれる所得捕捉率による不平等の改善こそが必要。
Q: 優遇税制や964(クロヨン)の源である源泉徴収の撤廃ないし見直しの必要性は、同感ですが、それらは直間比率見直し論の派生問題であって本質ではありません。直間比率に物差しがないというだけでは、直感比率の見直しを阻害 する要因にはなり得ません。直接税すなわち個人所得所得税の比重が高いことによる税負担の重圧感(国外移住の促進?)、高い法人税による企業の国際競争力の低下(国外移転による産業空洞化?)、さらには徴税技術的にみて取引のデジタル化による税務当局による取引捕捉性の低下等、直接税比率を下げる要因が考えられますから、直間比率の見直しは不可避ではないでしょうか。
以上の私の反論に対する井手教授の再反論というふうに展開していくと、文字通り「討論」になり得たのに惜しまれます。
○ 昨年10月の専修大学での日本公法学会シンポでの私の発言は、公法研究81号(有斐閣、2019)に掲載されました。川崎会員に対し 166頁、山本会員に対し 171頁です。山本会員とのやりとりは誌面上「分かり切った話ではないか」との印象を与えますが、私の発言の真意及び発言の背景は、2018年12月7日付近況報告5〜6頁で詳論しましたので、ここでは繰り返しません。ご参照下さい。
○ 10月26日(土)東洋大学白山キャンパスでの日本経済法学会は、午後のシンポジウムは消費者庁設置10周年ということもあってか「競争法と消費者」で、これに出席しました。校舎内でゼミ21期福島君(司法修習後、消費者庁)に会いました。
シンポジウムのタイトルだけを聞くと、オールドジェネレーションは、独禁法の目的が、競争秩序の維持なのか(かつての多数説)、「国民経済の発展」なのか(経済官庁派)、「一般消費者[及び中小企業]の利益の確保」なのか(正田彬先生ら弱者保護派)という往年の論争を懐かしく思い起こします。
それはともかく、消費者を研究課題の中心に据えていない身から冷静に6報告を分析すると、「大前提として価値観・価値序列を固定」すれば、演繹的に6報告の命題は導き出されるという印象を受けました。
気になったのは、2名の報告者が「公法・私法」という標語を用いたことです。おそらくは公正取引委員会・消費者庁等の指導・命令・裁決等を「公法」と称して、民事的救済等と区別するつもりで用いたのでしょうが、時代がかった用語法に思えました。
佐藤吾郎報告「医療分野における競争法と消費者」に関連して、私の同世代友人・近隣者の話から、患者(消費者)の選択肢として「セカンド・オピニオン」をとることが奪われつつある現状を問題提起したく思いました。すなわち開業医等医師の紹介状なしでは大病院にかかりにくく、運良く受診が許されても割増料金各回5千円賦課されます。他方、開業医の中には、病院への紹介状を乱発し検査等の名目で大病院に患者を送りこみ、結果として労せずして紹介料収入を得るとい者もあり、病院の混雑は一向に緩和されないという皮肉な事態を生んでいるのです。ある意味「患者の自己決定権」を阻害しているといえましょう。しかし患者の現実の切実感は、およそ医師通いから縁遠い研究者には伝わりにくいでしょうし、論点は競争法というよりは医療診療制度からみのものなので、経済法学会で議論・処理できる話とも思えず、発言用紙提出を断念し家路を急ぎました。
[ ゼミOB会 ]
○ 日本公法学会前日の10月11日(金)、関西在勤・在住のゼミ20及び21期卒業生有志4名とイタリアン「神戸ファルピッテ」で夕食をとりました。二次会は京都市北部からの1名が加わり、卒業生総勢5名と一緒に、部屋一杯に倖田來未ポスターが張られた三宮「ジャンカラ」でのカラオケです。卒業生が遠慮してくれて結果的にマイクをほぼ独占し、松田聖子「風立ちぬ」、三波春夫熱唱画面付「俵星玄蕃」(=こちらが黙っていても曲が終わる?)、携帯待受画面の片平なぎさを見せつつ「♬神戸じゃ渚と名乗ったの・・・」と小林旭「昔の名前で出ています」、AKB48「ギンガムチェック」、韓ドラ「イ・サン」主題歌で森山愛子「約束」、ご当地ソング「別れた人と神戸で会って」、荻野目「ダンシング・ヒーロー」、もんた&ブラザーズ「ダンシング・オールナイト」、播磨出身菅原洋一「芽生えてそして」をうたいました。参加者からこのところ定番の八神純子「パープルタウン」のリクエストがありましたが、リフレインが長く疲れる曲なので、今回は断念しました。かくして「究極の九曲?」にて「藤原[ゼミ]歌劇団神戸公演」を終えました。
[ 結 び ]
まもなく師走を迎えます。よきクリスマス、よき新年をお迎え下さい。次回(12月及び明年上半期の近況報告)は明年7月頃の予定です。それまで、お元気で。さようなら。