近況報告
藤原研究会(藤原ゼミ)卒業生の諸君,その後お元気ですか。
本年(2009年)3月に慶應義塾大学を定年退職し,慶應義塾大学名誉教授になりました。4月からは,明治学院大学法科大学院教授です。明治学院大学の本部は桜田通り(国道1号線)に面した白金台ですが,法科大学院の研究室・教室は,本年4月オープンの高輪校舎です。この建物は高輪警察署に近接し,坂道を下っていくと伊皿子交差点さらにフレンド学園・聖坂(ひじりざか)を経由し,慶應義塾大学三田校舎近くに出ます。徒歩で20分間程度の距離です。
3月の法学部教授会でのお別れ挨拶で,「Lunch, Library, Law Scoolの『3L』で三田界隈に姿を見せる」と予告しました。事実,前2Lのため高輪・三田間をしばしば歩きます。最後のLであるLaw Scool授業は,春学期選択科目1科目担当限りです。したがって,秋学期から「2L」です。Library利用は,ほぼ現職並みの厚遇を受けていますが,ゼミHPは先月あたりに削除されました。そこで,青木淳一君が立ち上げた本HPが,情報発信のため貴重な存在です。
[学外の公職]
学外の公職は,4月以降も,情報通信審議会専門委員(接続政策委員会。ユニバーサル・サービス政策委員会),情報通信行政・郵政行政審議会専門委員(接続委員会。ユニバーサル・サービス委員会),防衛人事審議会委員(職員処遇問題部会部会長),原子力発電環境整備機構(NUMO)情報公開適正化委員会委員長,エネルギー総合推進委員会・専門委員会委員等,変化はありません。原子力関係で1つ某法人の委員の仕事が増えました。秘密の任務というわけでもありませんが,委員構成等,プレス発表されていないため,ここでは伏せます。
[研究アウトプット]
4月以降の半年間で刊行されたものは,「情報公開訴訟において実質インカメラ審理としての検証物提示命令の申立てが認容された例」(福岡高決平成20年5月12日と同事件最決平成21年1月15日の比較)自治研究85巻9号137~156頁のみです。1月31日三田校舎での塾最終講義の再録は法学研究82巻7号に掲載されますが,刊行が遅れています。あと『経済法判例・審決百選』及び加除式の追録『地方自治法』(第一法規)並びに『情報公開等審査会答申事例集』(ぎょうせい)の原稿を出しましたが,校正未了です。
塾最終講義において,やり残しの出版企画2点と構想中の長編論文2点を紹介しました。出版計画中の1点について,既発表の論文の修文を中心にして,書き下ろしを加えるということで,過去の業績をまとめた形で世に問うというふうに企画を立て直しました。雑務に追われ歳のせいか遅筆になり苦戦していましたが,次回OB会の折にはお見せできると思います。
出版準備を優先させたために,長編論文はあとまわしにしています。目下のエネルギー政策の重点は,圧倒的に「地球環境」ですから,テーマ的にいって,構想中の長編論文は,越年させても支障ないという気になっています。
[研究雑感]
民主党中心の連立内閣が誕生しました。これによって,私の研究上,2つの課題が浮上しました。
研究課題の1つ目は,「転換期の行政法学:社会工学への道」(慶應義塾大学150年記念論文集『慶應の法学・公法Ⅱ』,2008)において,内閣提案の法案作成過程の改革案を提唱しました。政治主導を掲げる新しい連立内閣のもとで,どのような変化がみられるか,全体像が固まり動きが確定した段階で,新しい統治方式を客観的に分析してみたいものです。
研究課題の2つ目は,地球環境問題に力を入れる新政権のもとで,原子力を別にして,第1に,再生可能エネルギー(自然エネルギー及び未利用エネルギー)発電・熱利用等促進のための助成策の在り方,第2に,再生可能エネルギー受け入れにともなう電力・ガス・熱供給ネットワークの問題(オバマ大統領の標語でいえば「スマート・グリッド」が課題になってきました。
前者の再生可能エネルギー発電促進策は,1981~1987年にかけて当時の通商産業省サンシャイン推進本部委託研究・NEF(新エネルギー財団)「新エネルギー技術の企業化条件整備に関する調査研究」の委員(正確には1981年は再委託先。翌年からNEF委員。1985年のみ研究休暇で除外)として,設置者への補助,(余剰又は全量)電力購入方式等,さんざん知恵を絞った話です。そして電力会社による余剰電力買上げシステム(本年11月頃からは義務付けに変更)は,1992年,私も委員の電気事業審議会(当時)電力基本問題検討小委員会が,電気事業連合会提案を受け入れて発足したものです。未利用エネルギーは,1979年,私も委員の通商産業省公益事業部(当時)二次エネルギー利用効率化委員会が提唱し,熱供給事業に採用するアイデアは,2003年,業界団体である熱供給事業協会が,私が委員長をつとめた「熱供給事業の在り方特別委員会」で,「面的利用」というキーワードとともに,提唱しました。再生可能エネルギーではないが,高エネルギー効率のコージェネレーションでは,1987年,私も委員の通商産業省公益事業部(当時)コージェネレーション問題検討委員会が特定供給第5類型を提案したのが普及促進の口火ともいえます。
このように振り返ると,再生可能エネルギーやコージェネレーション普及のため,初期の頃から関わってきたこと再認識させられます。これが決して手柄話や自慢話にはならないのは,方々から叩かれながら汗をかいてきただけの話で,「黒子」役に徹してきたからです。
とはいえ,促進策の問題点も人一倍認識しているだけに,新政権による促進策を手放しでは喜べないというのが正直な感想です。他国の制度の正確な解析等も進め,「大胆に細心に」,つまり大胆な政策とともに,それら促進策のデメリット(disadvantage)や盲点に細心の注意を払うという,冷静な対応の必要性を訴えていきたいと思う今日この頃です。
第2のスマート・グリッドは,専門家の意見を聞いたり勉強会を傍聴したりして知識蓄積中です。電力ネットワークに限定しないでガスや熱供給のネットワークにまで拡大したスマート・エネルギーですと,かつてのCES(Community Energy System)研究会,その後のコージェネレーション研究会,前述の熱供給事業協会,総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会の小委員会や関連研究会等での勉強の延長線というか,むしろ総括の意味合いもありそうに感じています。
[カラオケ持ち唄]
このところ新曲に恵まれず,1月31日三田西校舎で披露した「孤独の向こう」(平原綾香)以降は,とくに仕入れていません。したがって総持ち唄数は,従前の108曲にプラス1曲で,109曲です(?)。
2009年9月21日 藤原淳一郎
本年(2009年)3月に慶應義塾大学を定年退職し,慶應義塾大学名誉教授になりました。4月からは,明治学院大学法科大学院教授です。明治学院大学の本部は桜田通り(国道1号線)に面した白金台ですが,法科大学院の研究室・教室は,本年4月オープンの高輪校舎です。この建物は高輪警察署に近接し,坂道を下っていくと伊皿子交差点さらにフレンド学園・聖坂(ひじりざか)を経由し,慶應義塾大学三田校舎近くに出ます。徒歩で20分間程度の距離です。
3月の法学部教授会でのお別れ挨拶で,「Lunch, Library, Law Scoolの『3L』で三田界隈に姿を見せる」と予告しました。事実,前2Lのため高輪・三田間をしばしば歩きます。最後のLであるLaw Scool授業は,春学期選択科目1科目担当限りです。したがって,秋学期から「2L」です。Library利用は,ほぼ現職並みの厚遇を受けていますが,ゼミHPは先月あたりに削除されました。そこで,青木淳一君が立ち上げた本HPが,情報発信のため貴重な存在です。
[学外の公職]
学外の公職は,4月以降も,情報通信審議会専門委員(接続政策委員会。ユニバーサル・サービス政策委員会),情報通信行政・郵政行政審議会専門委員(接続委員会。ユニバーサル・サービス委員会),防衛人事審議会委員(職員処遇問題部会部会長),原子力発電環境整備機構(NUMO)情報公開適正化委員会委員長,エネルギー総合推進委員会・専門委員会委員等,変化はありません。原子力関係で1つ某法人の委員の仕事が増えました。秘密の任務というわけでもありませんが,委員構成等,プレス発表されていないため,ここでは伏せます。
[研究アウトプット]
4月以降の半年間で刊行されたものは,「情報公開訴訟において実質インカメラ審理としての検証物提示命令の申立てが認容された例」(福岡高決平成20年5月12日と同事件最決平成21年1月15日の比較)自治研究85巻9号137~156頁のみです。1月31日三田校舎での塾最終講義の再録は法学研究82巻7号に掲載されますが,刊行が遅れています。あと『経済法判例・審決百選』及び加除式の追録『地方自治法』(第一法規)並びに『情報公開等審査会答申事例集』(ぎょうせい)の原稿を出しましたが,校正未了です。
塾最終講義において,やり残しの出版企画2点と構想中の長編論文2点を紹介しました。出版計画中の1点について,既発表の論文の修文を中心にして,書き下ろしを加えるということで,過去の業績をまとめた形で世に問うというふうに企画を立て直しました。雑務に追われ歳のせいか遅筆になり苦戦していましたが,次回OB会の折にはお見せできると思います。
出版準備を優先させたために,長編論文はあとまわしにしています。目下のエネルギー政策の重点は,圧倒的に「地球環境」ですから,テーマ的にいって,構想中の長編論文は,越年させても支障ないという気になっています。
[研究雑感]
民主党中心の連立内閣が誕生しました。これによって,私の研究上,2つの課題が浮上しました。
研究課題の1つ目は,「転換期の行政法学:社会工学への道」(慶應義塾大学150年記念論文集『慶應の法学・公法Ⅱ』,2008)において,内閣提案の法案作成過程の改革案を提唱しました。政治主導を掲げる新しい連立内閣のもとで,どのような変化がみられるか,全体像が固まり動きが確定した段階で,新しい統治方式を客観的に分析してみたいものです。
研究課題の2つ目は,地球環境問題に力を入れる新政権のもとで,原子力を別にして,第1に,再生可能エネルギー(自然エネルギー及び未利用エネルギー)発電・熱利用等促進のための助成策の在り方,第2に,再生可能エネルギー受け入れにともなう電力・ガス・熱供給ネットワークの問題(オバマ大統領の標語でいえば「スマート・グリッド」が課題になってきました。
前者の再生可能エネルギー発電促進策は,1981~1987年にかけて当時の通商産業省サンシャイン推進本部委託研究・NEF(新エネルギー財団)「新エネルギー技術の企業化条件整備に関する調査研究」の委員(正確には1981年は再委託先。翌年からNEF委員。1985年のみ研究休暇で除外)として,設置者への補助,(余剰又は全量)電力購入方式等,さんざん知恵を絞った話です。そして電力会社による余剰電力買上げシステム(本年11月頃からは義務付けに変更)は,1992年,私も委員の電気事業審議会(当時)電力基本問題検討小委員会が,電気事業連合会提案を受け入れて発足したものです。未利用エネルギーは,1979年,私も委員の通商産業省公益事業部(当時)二次エネルギー利用効率化委員会が提唱し,熱供給事業に採用するアイデアは,2003年,業界団体である熱供給事業協会が,私が委員長をつとめた「熱供給事業の在り方特別委員会」で,「面的利用」というキーワードとともに,提唱しました。再生可能エネルギーではないが,高エネルギー効率のコージェネレーションでは,1987年,私も委員の通商産業省公益事業部(当時)コージェネレーション問題検討委員会が特定供給第5類型を提案したのが普及促進の口火ともいえます。
このように振り返ると,再生可能エネルギーやコージェネレーション普及のため,初期の頃から関わってきたこと再認識させられます。これが決して手柄話や自慢話にはならないのは,方々から叩かれながら汗をかいてきただけの話で,「黒子」役に徹してきたからです。
とはいえ,促進策の問題点も人一倍認識しているだけに,新政権による促進策を手放しでは喜べないというのが正直な感想です。他国の制度の正確な解析等も進め,「大胆に細心に」,つまり大胆な政策とともに,それら促進策のデメリット(disadvantage)や盲点に細心の注意を払うという,冷静な対応の必要性を訴えていきたいと思う今日この頃です。
第2のスマート・グリッドは,専門家の意見を聞いたり勉強会を傍聴したりして知識蓄積中です。電力ネットワークに限定しないでガスや熱供給のネットワークにまで拡大したスマート・エネルギーですと,かつてのCES(Community Energy System)研究会,その後のコージェネレーション研究会,前述の熱供給事業協会,総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会の小委員会や関連研究会等での勉強の延長線というか,むしろ総括の意味合いもありそうに感じています。
[カラオケ持ち唄]
このところ新曲に恵まれず,1月31日三田西校舎で披露した「孤独の向こう」(平原綾香)以降は,とくに仕入れていません。したがって総持ち唄数は,従前の108曲にプラス1曲で,109曲です(?)。
2009年9月21日 藤原淳一郎